PHP研究所主催 2025年度文部科学省後援
第9回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作
福山 愛
愛媛県立松山西中等教育学校
5年
私にとっての大切な出会いは、図書館で出会った、ひとりの年配の女性とのことです。中学校に入ってすぐのころ、私は新しい環境にうまくなじめず、毎日がなんとなく不安でした。教室のにぎやかさに入りこめず、ひとりでいることが多かったです。
そんな私が安心できる場所は、家の近くの図書館でした。静かで、誰にも話しかけられずにすむからです。放課後になると、その図書館に向かうのが日課になっていました。
ある日、いつものように本棚の前で立ち読みをしていると、「それ、おもしろいわよ」と優しい声がして、ふり返ると白髪のきれいな女性が立っていました。びっくりして何も言えずにいると、その人はにっこり笑って、「私もその作家が好きで、よく読むの」と話してくれました。
それから私は、その女性と会うたびに少しずつ話すようになりました。おすすめの小説を教えてもらったり、読んだ感想を語り合ったり。本の話題だから、私も自然に話せたのです。その人との会話が私の中で少しずつ特別なものになっていきました。
ある日、私が「どうしてそんなに本が好きなんですか?」と聞くと、その人は少し笑って、「本の中には、現実では出会えない景色や気持ちがあるでしょ。だから自分の世界が広がるのよ」と言いました。そして、「あなたの感想には、ちゃんと自分の言葉がある。そういう人は、きっとこれからどんどん強くなれるわ」とも言ってくれたのです。
私はその言葉に、思わず胸がぎゅっとなりました。気づかれないようにしてきた自分の弱さや不安を、ちゃんと見てくれたような気がして。今まで、誰かにそんなふうに言われたことはありませんでした。
名前も知らないし、連絡先を交換したわけでもない。でも、私にとってその人との出会いは、自分を変えるきっかけになりました。あの言葉のおかげで、私は少しずつ自分を認められるようになり、教室でも笑える日が増えました。
参考:特別な経験がなくても大丈夫! PHP作文甲子園に学ぶ体験談の書き方

