月刊「PHP」2025年9月号 裏表紙の言葉

恥の多い生涯を送って来ました――著名な小説で知られるこの一節、多くの人が共鳴できるのではないだろうか。

授業で当てられたが答えられなかった。仕事で失態を演じた。大事な試合で平凡なミスをした。恥の出所は列挙すれば似たようなものである。

ただ、恥のほとんどは突きつめれば体裁の悪さに過ぎず、努力をして克服すれば、若気の至りの恥などすぐに挽回、むしろ勲章になったりする。

気をつけたいのは、大人になってからの恥ではないだろうか。公共の場でみっともない振舞いをする。指摘されてもごまかしたり、さらに分別のない行動に走ったりとなれば、結果としてより恥ずべき事態になってしまう。

謝るべきときに謝れない、八方美人になる、損得で行動する等々、人として信義にもとる自分に気づけないとすれば、残念な話であろう。

失敗や不名誉は誰にでも起こり得る。しかし、そんなときこそ、真摯でありたい。裏表のない潔さ、謙虚さがあって信頼も保たれる。これが年を取るほど難しくなっていく。

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