PHP研究所主催 2024年度文部科学省後援
第8回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作
堀井みさと
東京都目黒日本大学高等学校2年(受賞当時)
中学2年生の秋、私は入院をした。この期間を私は生涯忘れないだろう。
入院をしたのは拒食症の治療のためだ。当時の私は身長158センチ、体重30キロで、医師いわくいつ心臓が止まってもおかしくない状態だった。拒食症とは精神疾患の一種で、すごく簡単に言うとご飯を食べることができない病気のことだ。「食べない」ではなく「食べられない」。当人以外には理解しがたい感覚だと思う。栄養を摂れないことでやせ細っていき、最悪死に至る恐ろしい病だ。
私は入院してからしばらくしても長い間治療に前向きではなかった。入院の目的は食事を完食して体重を増やすこと。これは拒食症の人間からすると拷問と同じだ。薬や手術で治る病ではないため、ひたすら己との闘い。本当につらかった。何度も死のうとした。起きている時間のすべてを泣くことに費やした日も多く、まさに生き地獄。すべてに絶望していた。
そんな日々を経て、今私は普通にご飯を食べて健康体を維持することができている。当たり前のことかもしれないが、数年前の死にかけの私と比べると奇跡のような回復だ。
拒食症になってよかったとは一生思えない。代償が大きすぎるから。でもよかったこともあったと思う。家族や友達のありがたさを改めて知ることができたり、医師や看護師さんを始め、たくさんの医療従事者の方が私たちのために働いてくれていることがわかったりした。
また、将来の夢が見つかった。心理士になって、かつての私のように拒食症で苦しんでいる人たちの支えになりたい。実際に経験した私だからこそできることがあるはずだ。そして、私の命を救ってくれた医師や看護師さんたちといつか心理士として医療現場で再会して、改めてお礼が言いたい。拒食症の克服を通して得たもの、失ったもの、すべて私の人生のたからものだ。