月刊「PHP」2025年11月号 裏表紙の言葉

たった一言に、人生が支えられていることがある。

「いつも明るい朝の挨拶ありがとうございました。実は救われた日もありました。転勤前にお礼を言いたくて」

横断歩道を守る老人にそう語る勤め人を見た。

さりげない誰かの一言が、心の中の暗がりに灯をともす。その効果に対して疑いはあるまい。

不思議なものである。自分がかけた言葉は覚えていなくても、かけられた一言は、ずっと胸に残っている。

だからこそ、今日出会う誰かに、心からの一言を届けてみよう。気負わず、飾らず、そして、真心を込めて。

けれど、一言には、逆に想像できないこわさもある。何気ない一言が、相手の気持ちを閉ざし、心を傷つけてしまうことだって。そんな、世界中の人が発する一言が、今日一日何十億何百億と飛び交って、世界が平和になったり、戦争に近づいたりしているのである。

そう考えれば、一言には、人生どころか世界を変える力がある。よき方へも、そうでない方へも。だから言葉には、やさしさと慎みを忘れまい。今日も誰かへ温かい一言を。

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