月刊「PHP」2025年12月号 裏表紙の言葉
人はいつも心のままに生きているのだろうか。余暇を楽しんでいるようで、実はなけなしの自由を消費しているだけ。日常もさまざまな矛盾や葛藤を抱え、心中深くに本音を封じ込め、実は汲々と生きてきたのが現実では。
だから、やりたいことには「時間がない」。挑戦したいことには「力がない」と、あきらめてばかりいる。
心の中の浅い層では日々の務めや人との関わりを気遣う声が行き交うが、深い層の、自分がめいっぱい叫びたい声こそ、発されぬままになりがちだ。
分別はたしかに大切だが、何もしない平安に安住すれば、心の奥の切なる声を、みずから押し殺すだけになるのではないだろうか。
人生は短い。命を精いっぱい生き切るのが人生の醍醐味だとすれば、心の声を聴かぬままではよろしくない。
冷え込みが深まる年の瀬、師走の忙しさに追われても、時間を見つけ、一年を振り返り、心の奥底の声に、しっかり耳を澄ませること。そして、その声が求めるまま、ずっとやりたかったことを、新年は素直に始めよう。

