PHP研究所主催 2024年度文部科学省後援
第8回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

髙谷陽花
広島県安田学園安田女子高等学校2年(受賞当時)

小さいころから、私は祖母のことが大好きだ。私が一番年下の孫であるため、かなりやさしく、大切にしてくれているのだと思う。そして私にとっても、話をよく聞いてくれたり、一緒に遊んでくれたり、描いた絵をほめてくれたりした祖母は大切な人だ。

その祖母が、2年前に認知症と診断された。祖父が言うには、夜中に目を覚まして怒鳴ってきたり、客を待っていると言ったりしていたそうだ。私と会ったとき、祖母は私のことを、以前は「はるちゃん」と呼んでいたが、「あんた」と呼ぶようになっていた。しかし、母いわく、祖母は私といるときは、比較的おだやからしい。

しばらくしてから、祖母は介護施設に入居した。私はずっと祖母のことが気がかりだった。面会に行けるようになると、私も母や祖父について行った。

廊下の手すりをつかみ、介護士の方と一緒にゆっくりと、ほほえみながら歩いてくる祖母を見て、私は胸がいっぱいになった。祖母を見た瞬間に、涙が出てきた。母には、混乱させてしまうから、泣いちゃだめだよと言われていた。だから止めようとしたが、止められなかった。

祖母は膝丈のスカートをはいた私を見て、「あんた寒くないの」と言いながら、私の膝の辺りをなでた。この質問を、面会の間祖母は何度も繰り返した。私が誰かわかっていなかっただろう。それでもよかった。

面会時間が終わり、出入り口に向かうと、祖母もついてきた。私は必死に手を振った。祖母はきょとんとした顔で、私を見つめていた。すべてが、忘れられない。

どうか祖母に幸せでいてほしい。

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