PHP研究所主催 2025年度文部科学省後援
第9回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

阪田拓磨
東京都世田谷学園中学校2年

入学式で吹奏楽部の「アルセナール」の演奏を聴いたり、先輩に勧誘されたりしたことがきっかけで、吹奏楽部に入った。

金管、木管、打楽器、初めて見る、名前も知らない楽器が音楽室に並ぶ中、楽器体験をしたいと選んだのがクラリネットだ。

優しく気さくでおしゃべりが楽しいパートリーダーの先輩が大好きだった。その先輩が、歩きながら、階段を上りながら、クラリネットをポロンと歌うように吹く様子を見て、僕は心が弾んだ。クラリネットの優しいやわらかな音や、華やかな高音に、心が浮き立った。

クラリネットはずっしりと重みがあり、キーがたくさんついていて、複雑で難しそうだなとはじめは圧倒された。でも木でできたクラリネットは温かい雰囲気があって、僕にもこの楽器で音楽を紡ぎ出すことができるようになるといいのになと胸がわくわくした。

吹き始めて1年。先輩たちのように、きれいな音を出すにはまだ練習が必要だし、指もなめらかにまわらない。でもクラリネットが好きで、曲を作り上げていくために練習を重ねる時間が大好きだ。先輩は、吹く技術以外にもいろいろなことを教えてくれる。

木製のクラリネットは温度に敏感で、吹く前は手で優しく温めるとよいこと。心をこめて毎日楽器を磨くこと。大切な演奏会前には体調管理をすること。そして何より先輩が楽しそうに演奏する姿は、いつか自分もそういうクラリネット奏者になりたいという未来を描かせてくれる。

クラリネットのOBには、卒業しても集まってアンサンブルを演奏する先輩がたくさんいて、いつでも集まって仲間と楽器を演奏できるのはすてきだなぁと感じる。僕も大人になっても、出会えたクラリネットと、仲間とのつながりを持っていられたらいいなと思う。音楽を紡ぐように、僕はクラリネットとの時間を大切に編んでいきたいと思う。

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