月刊「PHP」2026年5月号 裏表紙の言葉
人は生きていれば、必ず傷つくものである。体の傷も心の傷も、できれば避けたいし、負いたくない。
しかしふり返ってみると、人生とはその傷の数だけ経験が積み重なって、形づくられてきたのではないだろうか。
人との競争、裏切られた信頼、己の力不足。さまざまな場面で受けた傷を抱えながら、自分を省みてきた日々。
自分の未熟さ、愚かさのために得た傷が、いつしか成長の証へと変わり、分別を覚え、人情をわきまえる大人になっていく。かつて配慮ができなかった他人の傷の痛みも、我が事として受け止められるようになる。
そうした人としての成長は、皆みずからが傷ついたがゆえに得られたものだ。
だから、今さら傷ついた自分を恥じたり、弱いと思ったりする必要はない。向こう傷を抱えたまま歩んできた自分がいる。その事実を、静かに肯定すればよい。
これからも、生きている限り何かと傷つくことだろう。それでも、恐れることはない。その傷の一つひとつが、必ず自分の誇りへとつながっていくと信じて。

