PHP研究所主催 2025年度文部科学省後援
第9回 PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

五島杏菜
福岡県福岡県立折尾高等学校3年(受賞当時)

私は中学生のときに、忘れられない出合いをしました。

私はそのころ、絵を学んで美術の先生になりたいと考えていました。しかし、親にも友達にも美術が好きだと言えず、部活も友達に誘われた、好きでもない陸上部に所属していました。自分で夢から遠ざかっているような気がしていたとき、私はある漫画に出合いました。

出合ったきっかけは、書店での試し読みでした。青色の表紙と、主人公の力強く筆を持つ姿に心奪われ、小さな期待とともにページをめくりました。成績優秀で不良友達に流されやすい主人公が、ある出来事から美術の魅力に気づき、東京藝術大学を目指す物語でした。

私は中学生ながらも、大学受験を真剣に考える主人公と自分を重ねてしまいました。私は、陸上部をやめて夢に近づける美術部に入りたいと思いつつも、周囲の目を恐れ、だれにも言えずに過ごしていました。主人公も、やりたいことを人に言えないという同じ境遇にいるはずなのに、私にはない勇気と行動力がありました。

藝大を目指して絵を描く努力をし、苦労を味わう苦しそうな主人公を見て、私はうらやましく思いました。好きなことに努力したい。好きなことで結果を出したい。私は漫画のキャラクターにあこがれ、進みたい道を両親に話し、今まで抱いていた美術に対する本音を素直に打ち明けました。

人生を変えてくれる出合いは、この先もたくさんあると私は思っています。その中でもこの出合いは、人生の転機となった大切な宝物です。

陸上でタイムを競うより、自分よりうまい絵を見て悔しがるほうが楽しかったです。美術部に入ってからの毎日は、自分が輝いて仕方がありませんでした。これからも初心を忘れず、自分の「好き」を思い出して生きようと、この出合いを思い返すたびに勇気づけられます。


参考:特別な経験がなくても大丈夫! PHP作文甲子園に学ぶ体験談の書き方

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