月刊「PHP」2026年6月号 裏表紙の言葉

世の中には昔から、意見の対立というものが絶えない。賢人であれ凡人であれ、それは変わらぬようである。

幕末から明治にかけて活躍した勝海舟と福沢諭吉もまた、考え方が違うことで知られている。二人は若いころ同じ船で渡米した間柄でありながら、後年はしばしば意見を異にした。

ある著作の中で、福沢は勝の言動について率直な批判を書こうとした。その際、福沢はその原稿を当の勝に送り、目を通してもらったという。

勝はそれを読み、「そうか。しかし自分の進退は自分で決めている」と言って、ことさら気にする様子もなかったとされる。考え方が違えば批判もある。それでも、相手に対する公平さと礼節を失わない。二人のやり取りには、そんな気風がうかがえる。

今の世の中、激しく人を糾弾するさま、度を越した中傷合戦ばかりで、殺伐としすぎているのではないだろうか。

異論があっても、公平さと礼節を忘れたくない。そんな姿勢が広まっていけば、議論の景色も少し違ったものになるだろう。社会の風紀も整っていくに違いない。

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