PHP研究所主催 2025年度文部科学省後援
第9回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

池本靖悠
鳥取県鳥取市立桜ヶ丘中学校3年(受賞当時)

「最後のリレーにしたくない」。いつも高め合ってきた仲間が、バトンを手に迫ってくる。この大会で1位にならなければ、全国大会の舞台には立てない。

3年生の私は二走。一走は3年間切磋琢磨してきた仲間。「絶対に全国に行く」。その思いで走り続けてきた。あとの二人は2年生だが、目指す場所は同じで、どのチームよりも熱い想いがあった。

スタートの号砲とともに、一走が力強く飛び出す。私は仲間を信じ、まっすぐ飛び出す。バトンを受け取った瞬間、「渡った」と安堵した。一瞬、時が止まったように感じた。聞こえるのは自分の息の音だけ。「絶対一番で渡す」。その思いだけで走り、バトンを次の仲間へ託した。アンカーがゴールするまで、叫び続けた。

歓声やどよめきは私たちに向けられたものではなかった。結果は4位。全国への道は遠く、言葉は出ず、ただ泣きじゃくった。

4×100メートルリレーとの出合いは、中学1年生の春。グラウンドで、バトンなんてないかのように駆け抜ける先輩たちの姿に胸が高鳴り、「自分もリレーを走りたい」と思った。そして秋、初めてリレーメンバーに選ばれた。2年生の夏、私はアンカーを任された。一走から三走は全員先輩。本気で全国を目指すチームだった。

責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、自主練を重ねて臨んだ本番。バトンは1位で渡されたが、ゴール直前で抜かされ、結果は3位。先輩に申し訳なく、悔しさで胸がつまった。「自分がもっと速ければ」。あの日の悔しさとやるせなさを力に変え、冬も仲間と限界まで走り込み、毎日バトンパスの練習を重ねた。

そして迎えた3年生の夏。今度こそ全国の切符をつかむために走ったが、あと一歩届かなかった。最初はただまっすぐに走るだけの競技だと思っていた。でも、一歩一歩に物語があり、一秒にすべてをかける世界だった。中学校生活でリレーと出合い、本気で夢を追った仲間と過ごした時間。それは、私にとって一生忘れられない出合いだ。


参考:特別な経験がなくても大丈夫! PHP作文甲子園に学ぶ体験談の書き方

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