月刊誌『PHP』2026年8月号 裏表紙の言葉

真夏の炎天下を汗だくになって歩いていると、身にしみるのは木陰のありがたさである。照りつける日差しは容赦ない。体力ばかりか気力まで奪っていく。

けれども、道端の木々が作るほんの小さな陰に身を寄せれば、不思議と息を吹き返す。暑さが消えるわけではない。それでも、しばし身を休める場所があるだけで、人はまた歩き出すことができる。

人の世にもまた、そんな木陰のような存在が必要なのではないだろうか。すれ違い、競い合い、知らず知らずの圧力。親しい仲でさえ、いらだちも出れば、疲れもたまる。ふと、人間関係にも暑苦しさがあると思えてくる。

ただ、それはいずれか一方の責任ではない。たがいの体温が生み出す蒸し暑さなのである。木陰の涼は、冷房ほどの効きはないけれど、心を休めるには最適だ。

酷暑の夏が続く。だれもが涼を求めている。ならば今日は、自分があなたにとっての木陰になろう。明日はあなたがだれかの木陰になればよい。そんな心遣いが、この暑い世の中に少しでも涼風を生むのではないだろうか。

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