月刊誌『PHP』2026年9月号 裏表紙の言葉
学校で小さな鉢に朝顔の種をまいた。水をやり続け、ある朝、小さな芽を見つけたときの驚きと喜び。やがて蔓が伸び、花が咲き、実を結び、新たな種を宿す。その変化のなかで、生命の不思議に触れた感動は今でも忘れられない。
それ以来、自分はどれほど種をまいてきただろう。畑の種ではない。本を読み、人と出会い、新しい仕事に挑み、時には興味のないことにも力を尽くしてきた。その一つひとつも、実は人生にまいた種だったかもしれない。
不思議なもので、芽が出る種もあれば出ない種もある。すぐに花が咲くものもあれば、長い年月を経てようやく実を結ぶものもある。だから種をまくとき、人は結果を約束されているわけではない。
それでも種をまかなければ何も始まらない。自分だって同じこと。どんな天分があるのかも、何に向いているのかも、やってみなければわからない。
人生とは、自分の可能性を信じて種をまき続ける営みなのだろう。芽が出る日を急がず、今日もまた一粒の種をまきたい。いつか思いがけない花が咲くことを願いながら。

