月刊「PHP」2018年9月号 裏表紙の言葉

時に痛ましい犯罪が起き、犯人が逮捕されると、昔を知る友達が記者の質問に、「いい子でした。とても事件を起こすとは思わなかった」と答えるのを耳にする。いったい何がその人物の人となりを変えたのか、心が暗くなる。

目標や理想を描いて努力すれば、人は人格を磨き、能力を高めて自分を変えることができよう。その一方で、さまざまな経験を積み、環境の移り変わりを経るなかで、意図せざる変化を余儀なくされるのも人である。

とするなら、誰もが時として自分に対してふがいなさや憤りを抱く理由の一端は、なりたい自分になれず、いつしか変わり果てた自分の姿を受け容れられないからではあるまいか。

ままならない自分の一面は誰にもあることだろう。けれども、自分を貶めるほどの考えに至ってはいただけない。大切なことは、何があっても自分の将来に希望を持ち続けることである。

そのために、わずかな時間でも日々自分と向き合う努力を怠らずにいたい。みずからを省みつつ、自分を赦し、励ます。少しでもよく変わり得る自分に期待しながら。