月刊「PHP」2018年12月号 裏表紙の言葉

今年ほど天変地異の恐ろしさを感じた年もなかったのではないか。
地震や酷暑、台風が国土をこれでもかと傷めた。
天災はいつも背中を斬りつけてくるように理不尽である。
多くの犠牲者が出ても、怒りの矛先をどこにも向けようがないからである。

災いは試練だけを残して去っていく。
その試練に耐えるには、平素どんな心持ちで生きてゆけばよいのだろう。

戦国時代、尼子家家臣・山中鹿介は、絶対不利ななか、主家再興を遂げるべく、三日月に、「願わくば、七難八苦をわれに与えよ」と祈ったという。
志の実現のためならば、いかなる苦しみも望むところと覚悟したのである。

あらゆる慰めも届かない苦しみや悲しみもあろう。
だが、生きている限りは、極限の状況にあっても折れず、前を向いて生きることしかできないのが人生である。

来る年の平穏無事を祈りつつ、断固たる己の一念を見極めたい年の暮れである。