月刊「PHP」2019年6月号 裏表紙の言葉

世の中には心の余裕がある人とない人がいる。その根拠は人それぞれで容易に窺いしれないけれど、実は物の見方一つとは言えまいか。

例えば、余裕のない人は予定外のことがあると取り乱す。一方、余裕のある人はトラブルを肯定し、事態を捉え直して解決する。優れた経営者の中にはトラブルを楽しむ感のある人もいるが、それができるのは物事の本質を見極めるコツをつかんでいるからであろう。

一流プロゴルファーもミスを最初から想定してプレーしているという。ミスショットを予定の一打と考えるので、窮地でも自分を見失うことがない。素人に限ってナイスショットだけを期待するから、落胆ばかりするのである。

結局、余裕とは、人は完璧ではないとか、あるいは物事はうまくいかないものだといった、鷹揚で肯定的な考え方によるのではなかろうか。

余裕を求めるならば、まずは余裕を持ちたいと強く願おう。そしてまず何でも受け容れる努力から始めよう。