月刊「PHP」2019年9月号 裏表紙の言葉

見方によれば、人は日々、互いの心を傷つけ合って生きているのではないか。自分の無遠慮なふるまいが人を不快にし、意味ありげな他人の言葉に棘を感じる、そうした人を傷つけたり、傷つけられたりした経験は誰にでもあろう。

ただ、それが大きな問題にならないのは、多くの人が寛容な心で水に流しているからに違いない。

もちろん、時には傷つけられた怒りを貯めこむ人もいる。まして、自分が貶められ、相手が反省していないときなど、憤懣やるかたないことだろう。だからと言って怒りをぶちまければ、また新たに人が傷つくだけである。

まずは傷つく人を減らそう。そのためには、人の心の痛み、悲しみに共感できる力を、お互いもっと養おう。そうすれば、誰かが傷つきそうな場合に、早めにブレーキがかけられよう。

傷つくのは自分だけではない。誰だって傷つくのである。それに、人を呪わば穴二つ、人を傷つけようとすれば自分にも必ず返ってくる。そんな心の因果をよく心得て、人格を高めあいたい。