月刊「PHP」2020年6月号 裏表紙の言葉
戦争、天変地異、そして疫病の流行。国家社会を襲う未曽有の危機は、きまって不意に訪れる。そして人びとは不安と恐怖から理性を失い、狂奔した行動に走る。
必需品の買い占めに走ったり、他国民を非難したり、人として見苦しい振舞いをしてしまう。恐ろしいのは移ろいやすい人の心。平時であれば自制心を保つところが、非常時となるとたががゆるみ利己的になる。おのずと下品になっていく。
国民の品格が問われるのは平時よりもむしろ、こうした苦難の時なのではないだろうか。
元来、日本人の素晴らしさは和を貴ぶところにある。だからこそ、秩序を守りながら衆知を集め、危機を打開することができる。
それは数多くの被災地でも、私より公のことを優先し、他人への思いやりを忘れない民の行動一つひとつに、存分に発揮されてきたといえよう。
和の伝統精神を以て、これまで通り節度を失わず、世界の模範となる国民でありたい。競い合うより、一つになって協力し合うべき時代に来ている。
その魁として日本人は成熟した大人の国民でありたい。