月刊「PHP」2021年6月号 裏表紙の言葉

何をするにおいても立場を考えるのは大切なこと。すべての人にその人なりの立場というものがある。ただ問題はだれの立場を考えるべきかであろう。残念ながら、近頃の多くの人は自分の立場しか考えなくなったのではないか。
国どうしで考える自分の国の立場。身の回りにおける自分の立場。さまざまな領域の立場があるけれど、大きな立場であるほどわが事が最優先。相手の立場など考えないようになってきた。わが国ファーストばかりである。そんなことで何がうまくいくのだろう。歩み寄っていけるのだろう。
せめて、一個の人間として、自分の立場も大事だけれど、相手の立場も等しく大事だと考えられる自分でありたい。和を保てる人でありたい。
昔、〝自分を勘定に入れず〟と書いた詩人がいる。そこまで自分を無にすることはできなくとも、自分以外の多くの人の立場を思いやれる、そういう者に私たちはなりたい。一人ひとりが利他の心を磨いてこそ、世の中は美しくなると信じて。