月刊「PHP」2021年11月号 裏表紙の言葉

人は誰もが重荷を負って生きている。たとえば、国中の期待を背負って戦うアスリートや、命のために一刻を争う医療チームの姿には頭が下がる。
一方、重圧には見えなくても、家族を守る、組織の任務を遂行する、伝統の技術や文化を継承するといった責任を全うすることだって、実はたいへんな重荷ではないだろうか。
身軽な生き方を望んでいたつもりが、境遇や性格に左右され、気がつけばいろいろなものを背負っている。手放したいものもあるが、もはや背負うこと自体が生きがいとなっている。案外、人生とはそうしたものかもしれない。
時には重さに耐えかね荷を軽くしたくなることもあろう。しかし、それでは結局他人の荷を重くするだけ。心がけたいのは、自分の荷はしっかり背負い、他人の荷を見れば少しでも軽くしてあげる心ばえを鍛えることではないだろうか。
背負い続けていれば苦しみや悲しみは日毎訪れる。だからこそ互いに励まし合う心根も養いたい。荷の重さは変わらなくても、少しは心が軽くなるに違いないから。