月刊「PHP」2022年2月号 裏表紙の言葉

私たちの多くは、自分の人格が一つではないことを知っている。たとえば、物事を決める場合、私たちはつい利己的な方向に終始する。
勝負事ともなれば、勝てば驕り、負ければ意欲を失う面倒な人格の自分もいる。利他の精神などとても覚束ない。
そんななかでも、自分を客観的に見つめる聡明な自分は、必ずいる。ただ問題は、その聡明な自分が、必要なとき、必要な場面で現れてくれるかどうかであろう。もしそれが可能となれば、常に分別ある判断ができるし、道を誤ることはない。
ところが、聡明な自分こそ心の奥から容易に出てきてはくれない。反省しきりの頃にようやくご登場なのである。
日常の自分は、世間体や常識に捉われているし、常に感情的といってもよい。心もとないこと甚だしい。
とはいえ、頼みになる自分でいるには、日頃から心を静め、素直な心で、さまざまな自分との対話を重ねることしかないのではないか。聡明でありたいと願う心が、少しずつ人格を変えるはず。望まない自分ともいつか決別できると信じたい。