月刊「PHP」2023年7月号 裏表紙の言葉

進学のとき、人生の転機を迎えたりすると、人はにわかに進路を選択しなければならないことに気づく。すると、世間における自分の相場が一気にはじき出され、いつしか人と競合している現実を知る。
今さらながら、世の中は多くの人生がぶつかり合い、競り合って共存している。誰もが決めてしまった第一志望を頭上に掲げ、一歩も引きたくない思いで努力を始める。
ただ、たとえ選考に勝ち残っても、理想のキャリアに直結するとは限らない。真に自分が望む生き方に沿うかどうかが問題で、年を経るあいだにそこをきっちり見定めることができるかが大切なのである。
ともすれば人は、何をしたいかより、どちらが有利か不利かで判断してしまう。そしてあとになって、第一志望でなければいけない理由など、大してなかったことを悟るのだ。
どんな生きがいをもって生きてゆくのか、自分のほんとうの志にいかにこだわっていくべきか。人生は長くなったが、志を得るには短い。一度の人生、必要なのはじっくりふり返る時間なのかもしれない。

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