月刊「PHP」2024年2月号 裏表紙の言葉

ゴルファーがボールをカップに沈めるために、グリーン上を歩き回り、違った位置からボールを見る。盤上で勝負する将棋は座ったまま対峙するが、棋士のなかには席を立ち、相手の側から形勢を探る人もいる。
実際に身体を動かし目線を変えるのは、固定した場面から全体を把握すること、また主観に頼らず、より客観的に事態を把握することのむずかしさから来るのであろう。勝負事ならなおさらだ。
一方、私たちは日常、自分なりのルーティンで動いている。それは思考、行動の各面で、脳の負担を軽減しようとする本能からである。
しかしながら、仕事、人生でも勝負事同様、重要な局面は静かに訪れる。そこでは、やはり大局的に、客観的に、思考を集中させなければいけない。適当にすると判断を誤る。
だからこそ、時には意識的に己の主観を揺さぶる行動を取ってよいのではないだろうか。寄り道をする。会議の場所を変える。目線を変える些細な工夫が、大局観を持った自分へと成長を促してくれるかもしれない。

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