月刊「PHP」2025年7月号 裏表紙の言葉
息を呑む大きさの入道雲、動かない梅雨前線、神出鬼没の線状降水帯、そしてできては襲来する低気圧等々、初夏の天気はダイナミックで忙しい。自然のエネルギーをことさら感じる季節である。
例年の激しい雨風に、人間が古くから地道に対応してきた歴史もまた忘れてはなるまい。
天気予報である。1884年6月1日午前6時に発表された日本初の天気予報は「全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ但シ雨天勝チ」というものだった。
この予報が当たったかどうかは別にして、この予報が発せられるようになって以来、古代から江戸時代までの日本人が恨み節を言うしかなかった天気の急変に、備える余裕をもつことができた。
禅語に「日日是好日」という言葉がある。雨や酷暑の日には縁遠い言葉と思われるが、そうではない。その意は、どんな日であれ二度と来ないかけがえのない一日、全身全霊でよい日とせよ、というものだ。暑さや雨の被害のないことを祈りつつ、気持ちは湿らせずに、からりと行きたい。