恋愛相談室

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亡くなった彼女への気持ち
 井上香織先生、はじめまして。

 悩んでます。

 私は38歳で彼女は26歳なのですが、いま一歩先に進めないでいます。

 自分が過去に囚われ過ぎているのが原因だと思っています。

 13年前に結婚を意識するまで考えていた彼女がいました。

 でも、彼女は私の目の前から居なくなり結婚まで至りませんでした。

 1年後に彼女のお母さんから連絡があり彼女の死を知りました。

 初めは何を言っているのかと受け入れられなくて動揺しましたが、目の前からいなくなった理由をお母さんから聞いて、彼女が病気だった事に気付かなかった自分。そして、彼女のお墓を目の前にして絶望感に襲われました。

 そのあと、何度か彼女の後を追うことを考えたりしましたが、死ぬという事が怖くてできませんでした。

 だから彼女の居なくなった穴を埋めるために何人かの女性と付き合いましたが、怖くて前に進むことが出来ませんでした。

 その私が、今回出会った彼女に対して怖さもあるのですが、一歩先に進みたいと考えているのです。

 今の彼女と居ると気持ちが和む部分があり落ち着くのです。

 彼女の笑顔と彼女の声を聞いているとなんでも頑張れる自分がいて、失いたくないと思うのです。

 今の彼女は、前の彼女の死は知りません。話すべきではないと思っています。

 知り合って3年立ち、いま一歩先に進めない自分に見切りをつけたいのですがどうしていいかわからないのです。

 良きアドバイスをお願いします。

(38・男性・システムエンジニア)

回 答
 辛い日々をお過ごしだったのですね。

 お察しいたします。

 仏教では、愛する者との別れを「愛別離苦」というそうです。

 いきとしいけるものは、皆、遅かれ早かれ命を散らすもの。あなたも、そして、現在の彼女も……明日、突然、事故にあって命を落とすかもしれません。だから、哀しみにとらわれてばかりいないで、今日という日を悔いなく生きよという教えです。

 あなたはこの十三年もの間、命の尊さと儚さ、あとに残されたものの悲しみをじゅうぶん過ぎるほど感じてきたことと思います。

 そろそろ、自分の幸せを考えてもいい頃なのではないでしょうか?

 あなたは「前の彼女の死を今の彼女に話すべきではないと思っています」と書いていらっしゃいますが。あなたがきちんと気持ちの区切りをつけることができるのなら、そのほうがいいかと思います。

 けれど、時折、亡くなった彼女のことが胸を過ぎり、罪悪感に苛まれるようであれば、時期を見計らって、自分の胸のうちにある、わだかまりを今の彼女に打ち明けてみるのもいいかもしれません。もちろん、彼女はあなたの抱えているものの大きさに衝撃を受けることになると思いますが……。

 いずれにしても、一度、彼女のお墓参りに行き、墓前で思いのたけを話してくる、というのはいかがですか?

 たとえ、彼女があなたへの想いを残したまま亡くなったのだとしても……。

 あなたが「病気だったこと。気づいてあげられなくて、ごめん」と詫び、心から手を合わせたら、きっと、彼女はあなたの幸せを祝福してくれるのではないかと思います。

追伸

 もしかしたら、あなたは拙著『さよならの向こう側』を読んでくださったのかもしれませんね。

 あの物語は、架空のお話ではありますが、実際に私が父の臨終に立ち会ったことで、生まれたエピソードもあったりします。

 愛する人の死……その現実に直面した者たちは、哀しみを乗り越え、死を受けいれてゆかなければなりません。そして、生きてゆかなければなりません。

 残された者たちに残るのは、想い出だけなのか、それとも喪失感だけなのか。

 いずれにしても、故人の魂は、いまや安らかに天上に昇ったのではないのかなと私は思っています。

 そう思うことにしましょう。だって、そう思わないと、亡くなった人たちの魂が浮かばれないことになってしまいます。

追伸・その二

 私事で恐縮ですが、奇しくも6月11日、父の命日に書き下ろしの新刊『蜃気楼の彼方に』(幻冬舎刊)が発売になりました。


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