「見方・考え方」イノベーションで社会を変える。
創設者・松下幸之助の願いを胸に挑戦を続ける社員の想い、「繁栄によって平和と幸福を」具現化する活動ストーリーを紹介中。
今回は書籍販売の現場が取り組む、ベストセラー『道をひらく』を未来につなぐチャレンジについてお届けします。
発刊から半世紀で570万部。松下幸之助の本が選ばれ続ける理由
──「この本は、単に仕事のノウハウを学ぶためのビジネス書ではありません。人生のあらゆる局面で立ち止まったときに、そっと開く『人生のバイブル』なんです。読者と書店員さんの言葉で、それを確信しました」
1968年刊行の『道をひらく』は、2026年2月に累計発行部数574万部を突破した。その販売の最前線に立つのが、書籍販売部門の責任者・植田光太だ。歴代の書店営業担当者たちにとって、この本は「数字以上の『特別な熱量』を持つ存在」だと、植田は言う。その本質に改めて気づかせてくれたのは、日々店頭で読者と接している書店員たちの声だった。
社内ではある時まで、本書の読者は男性ビジネスパーソンが中心だと思われていた。変化の兆しは2014年頃。500万部を突破して以降、営業の現場担当者らは、どうすればより多くの人に読まれる本になるか常に考えており、売場や商談の場でも話題にした。すると書店側から、「(『道をひらく』は)年齢や性別を問わず、本当に幅広い方が買っていかれます」という情報がもたらされたのだ。
読者が教えてくれた「ビジネス書」という枠を超えた価値
──「読者との接点が多い書店員さんの意見をヒントに企画したのが、リバーシブルカバーでした。ビジネス書然としたデザインは、電車やカフェなどで開きにくいという声が寄せられたんです。従来のカバーの裏面を北欧風の別デザインにして、お好みで巻き替えてもらえるようにしました」
その新しいデザインを店頭に並べたところ、これまで見えづらかった女性の読者層が一気に顕在化した。また、「無作為に開いたページに書いてあることが、不思議とその日の自分にフィットする」と、本占いのように使っているという意外な読み方にも気づかされた。
──「『読者に合わせてカバーを変える』という私たちの挑戦が、ここから始まりました」
大切な人へ届けたいから、100種類以上のデザインが生まれた
『道をひらく』には、独特の読まれ方がある。それが「贈り物」としての需要だ。
──「一年の始まりを迎える年始や、就職や転職、新たな一歩を踏み出す旅立ちの春に、大切な人へ『道をひらく』を贈る文化があることに気づきました。そこで、季節に合わせた特別なパッケージを導入したところ、これが大変な反響を呼んだんです」
以来、オリジナルカバーの施策は10年以上続いている。それを支えているのは、書店の皆さんと、営業の現場担当者とのコミュニケーションだ。「"ご当地"カバーを作ってはどうか」「私たちのチェーン限定のデザインが欲しい」など、カバー替えに共感が集まり、注文とともにアイデアも続々と寄せられるようになった。書店員の「この本を届けたい」という想いに応えて共創を続けた結果、オリジナルデザインのカバーは、今や通算で100種類を超えるまでになった。
──「地域や書店の個性を纏ったカバーは、それぞれが読者と本を繋ぐ新しい架け橋になっています。これほど多様な姿に変身しながら、そのどれもが愛されている本は、日本の出版界を見渡してもほかにないと思います」
先輩たちの想いを受け継ぎ、世界に一つだけの「あなたの本」に
「こんな本はほかにない」。植田は何度もその言葉を口にする。それは、単に売れ続けているからではない。歴代のPHP研究所の先輩たちが、時代ごとの読者を想い、大切に売り続けてきた「財産」だからだ。
──「私たちがやっていることは、歴史ある看板商品の顔をただ新しくしているわけではありません。先輩たちが紡いできた想いをしっかりと受け継ぎ、次の世代へとつなぐための『新しい価値づくり』なんです。だからこそ、独りよがりなデザインではなく、読んだ人が心から喜んでくれるもの、手にした瞬間に心が動くものにこだわりたい」
トレンドが激しく移り変わる現代だからこそ、本質は変えず、佇まいを変える。「この一冊」を、現代に生きる人々の心に届けるために何ができるかを考え続け、日に新たな活動に取り組んでいる。
──「100人いれば、100通りの『道』がある。だからこそ、『道をひらく』もカバーの数だけ違った表情があっていい。その多様なデザインの中から、手にとってくれた方が『これこそ、私のための本だ』と感じてくれたなら、これほど嬉しいことはありません。その瞬間に、この本は世界にたった一つしかない"あなたの"『道をひらく』になるのだと、私たちは信じています」




















